話は最初に水素水を飲んだ平成18年3月にさかのぼります。今この原稿を書いているのは平成28年3月。
10年間の奇跡(笑)の珍道中爆笑物語です。
50歳の誕生日を迎えようとしていたある日、銀色のアルミパウチに入った「体にいい水」なるものを知り合いにいただきました。
その当時体調は最悪でした。私は持病もちです。といっても現在でも病名はついていません。似たようなものにシックハウス症候群というものがあります。私の場合、新建材などが出す毒ではなく、人間が出す毒に極端に弱かったのです。
えっ、そんなものがあるの?と思われるでしょうが、もし知り合いにエステティシャンとか、マッサージや指圧を職業にされている方がいらっしゃったら聞いてみてください。「『もらう』ってわかる?」と・・・。これは体質もあるようですから全員ではないと思いますが、たいていの方はご存じのはずです。要するに「痛み」や「疲れ」をもらってしまうのです。
実は人間は誰しもそうやってストレス物質のやりとりというか、影響を受けています。はっきりとは気づいていないだけです。ミステリアスな話ではなく、単純に化学物質です。
ストレスを感じると、何らかの化学物質が体や息から揮発するのです。ひどい怒りを感じた人の息を濃縮すると、とんでもなく強い毒性の物質が残る。という話を聞いたことがありますが、要するにそういうことだと思います。
約40年前、私は専門の大学を卒業して臨床検査技師として総合病院で働き始めました。救急指定でもあったので、毎日どなたかの生死にかかわっていました。40年経った今でも、脳裏に焼き付いて忘れられない情景がいくつもあります。
その当時、どんなに治療しても胃潰瘍が何年も治らなかったのです。でもなぜそうなのかも分からないままだったのですが、エステティックサロンを経営するようになって、スタッフから「もらう」という言葉を聞いて、そこでやっと納得がいったのです。専業主婦をしていたころは、胃の調子が悪いなんてことが全くなく、エステのお仕事をするようになって、また胃の調子が悪くなっていったのです。胃だけではありません。とにかくどこもかしこもまともではないという感じですね。不定愁訴のオンパレード。
単純に経済的理由だけで始めたお仕事だったので、少し落ち着いたらやめようと思っていました。商売などやったこともないのですから、すべてがカルチャーショック。最初はスタッフもいる店舗をそのまま引き継ぐという形でスタートしましたが、いろいろなことが手に負えなくなり、結局一人になり少し広めの一戸建てを借りて自宅の二階を店舗にして、営業するようになりました。
毎日毎日、明日はもうやめよう、来週こそ、来月こそとやめることばかり考えながらも、子どもが小さいと、自由のきくその仕事がなかなかやめられないのです。子どもが学校から帰って来たときうちにいてやれる。儲かりもしないけど、節約もできる。そういったかなり消極的な理由からズルズルと12年以上が経っていました。
それにずっと通ってくださるお客様のおかげで何とか暮らしているわけですから、それなりに当てにしてくださっているものをむげにもできません。それに、まさか後でこの仕事がこれほど役に立つとは、そのときは思いもしませんでした。人間の感情の動きとか、悩み苦しみとか、さまざまな事件や、もちろん良いことも含め、いろんな疑似体験を重ねていたのです。普通は他人にそうそうは話さないことでも、私は検査技師のお仕事で守秘義務が身に沁みこんでいます。おそらく誰にでも話せないことを、話せる場でもあったわけです。
ただ、「もらう」私としては、体調は日に日に悪くなり、限界を迎えようとしていました。とにかくあちこち痛い。ぐっすり眠れない。だるい。しんどい。更年期障害もあったのでしょう。不安というかほとんど鬱状態。人生に夢も希望もない!やっと中学生になる一番下の娘がせめて成人するまでは何とかしてやりたい。でも、できそうもない。
それどころか、多分もうすぐ死ぬな、私。後5年もつかな~。としか思えない。
死にたいわけではないけど、自分の人生もままならないまま、子どもも育て上げられないかもしれない。自分と家族が生きるのに精いっぱいで、何かとお世話になることばかり。迷惑をかけることはあっても、なんの役にも立ってない。自分には生きる価値もない。生まれてきた意味もない。このまま死ぬのか~。ああほんとに情けない。とはいえなかなか簡単に死ねないのが現代。痛いのは嫌だし、困ったな~と、逡巡する日々でした。老化という下り坂を急加速で転がり落ちていたといってもいいのかもしれません。
そんなとき「身体にいい水」とだけ言われてもらった“気持ち悪い水”(笑)。
水ならペットボトルでいいんじゃないの?中身が見えない不安。体調が悪いと気持ちもねじれるのでしょうか、素直に信じることなどできませんでした。台所の隅に押しやって見ないふりを約1か月。
せっかくだから飲んでよ!と何度も促され仕方なく、コップ一杯をおそるおそる飲んでみたところ、まずい!臭い!
水用のパウチでなかったため、におい対策をされていないパウチ容器だったのです。
ところが飲んで10分もしないうちに、す~っと体が軽くなるのです。
イヤイヤ気のせい気のせい。
でも何度飲んでもやっぱり何かが抜けていく感覚。確かに体が軽くなる。石のように固くなった肩や腰が柔らかくなる。ギシギシと音を立てるような関節が動かしやすい。夕方になると痛くて開けられなくなる目が痛まない。よく眠れるような気もする。
そんな思いと、まさか~という思いを行ったり来たり。
今思えば“におい”の原因はプラ臭だったのですが、そのにおいの成分が体にいいのかしらと思うと、ありがたい気さえしてくる。
1L容器5本ほどを飲みきったころ、確かにどん底だった体調が少し楽になっている。
なくなると少しさみしい。飲まなくなると日が経つにつれてまた体調が悪くなっていくわけです。
もう一度飲みたい!
「すみませんがもう一度いただくというわけにいきませんでしょうか?」
勝手なものですが、そうお願いせずにはいられなかったのです。
また同じほどいただいたのですが、一旦落ち込んだ体調が再度よくなって初めて、本気で信じる気になったのです。
まるで砂漠で水。オアシスを見つけた~~!という気分でした。ところがそうなると「体にいい水」が無くなるのが怖い。無くなったらまたあのしんどさが戻ってくる。
そもそも一体あの水の正体は何なんだ!水に何かが入っているのは間違いないとしても、それなら水でなく、その成分を飲めばいいではないか?
そこで理由を聞いたところ「これは水素水というもので、『悪玉活性酸素を選択的に還元して、水に変えて排泄する!』」
出た~眉唾!!
どうやって水素が悪玉か善玉かを見分けるわけ?!善玉とか悪玉とかコレステロールで流行っているからって、耳触りが良さそうだからと、すぐ真似をする!
はあ~水素には目でもあるというわけ?!
期待しただけにショックも大きく、こういう胡散臭いものが消費者を惑わすのよ!!と少々怒りさえ感じました。
これが「水素水」というものについて初めて聞いたときの正直な感想でした。
“胡散臭い”その一言(笑)。
そのくせその水が無くなるのが怖い、ずっと飲みたいというのが実感そのもの。
う~~こうなったら正体を突き止めるしかない!!!
これを作っているところに連れて行って~~!!!
親切でくださった方も災難ですね。
もっと欲しい!でも疑わしい!!ほんとにいいものなら証拠を見せろ!!と迫っているようなものですから。勝手なものです。
それが平成18年の5月頃だったと思います。